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厳しさに耐え抜く生命力 ー森林限界線に生きるブラック・スプルースー

by 小林ケイ

Black Spruce  学術名Picea mariana

アラスカの樹木帯とツンドラ帯の境、いわゆる森林限界ライン。地球上でもっとも過酷な環境のひとつに生育するブラック・スプルース。和名で黒唐檜(クロトウヒ)。

冬の香りの代表格です。

冬は、東洋医学的には「陰」の時季。じっとして、たっぷり栄養と睡眠を取って、動物たちが冬眠するように春からの活動に備えてエネルギーを溜め込みたいときです。でも現代の私たちは、そんな季節に合わせた暮らしからはすっかり遠ざかって、冬だろうと忙しくしてしまう。

本来は、動きを止めていろんな思いを巡らせて、次季の目標を立てたり方向付けをするときなのに、外の世界の慌ただしさに巻き込まれて自分を見つめることすら忘れてしまった。

そんな自然を失ってしまった私たちに。

ブラック・スプルースの静けさをたたえた森林を思わせる香りは、深く吸い込むと胸全体に染み渡り、強く温かな大自然のエネルギーが補充されていくのが分かります。そして、意識を内側に集めて自己をまっすぐに見つめるよう促します。

自分には溢れる生命力があり、それは本当の自分を生きるために使う力であること。

たとえ一見困難や辛さを感じる状況に陥ることがあっても、それはより良い方向に進むための必然であること。

すべては繋がっていて、自分は大自然の一部として生きていること。

忙しく生きていると忘れがちな、大切なことを思い出させてくれて、

「常に自分の力を信じて、全体の中でたくましく『自分』を生きなさい。」と背中を押してくれる香り。

より高みに向かうヴィジョンに集中できるので、私は外の世界に振り回されているように感じるとき、自分の内側と深くつながりたいとき、焦りや迷いを消したいとき、この香りにサポートしてもらいます。瞑想のお供にぴったり。

陽気はもう春ですが、コロナウィルスでイレギュラーな現象に揺さぶられている今の私たちが意識すべきは冬の暮らしのやり直し。(水星逆行も重なっています)できるだけ動き回らずに、エネルギーを溜めて、免疫力を高めることが感染回避のための最善です。それと同時に社会全体が一度立ち止まって、これからの新しい時代のために、今までを振り返り、思いを巡らせる時間を与えられているのかもしれません。

こんな不安定な今こそ、厳しい環境下でたくましく生き抜くブラック・スプルースのエネルギーが力になってくれそうです。

さて。

ブラック・スプルースは針葉から抽出されるエッセンシャルオイル。

葉は植物の呼吸器の役割をしているので、エッセンシャルオイルに姿を変えても私たちの呼吸器に作用します。エネルギー的には温性と乾性。針葉ということは、肺を収縮させて、溜まっている冷えや湿り気(粘液)を出しやすくしてくれます。

身体が冷えて、痰が絡むような重苦しい咳が出るときに。また、気持ちが落ち込んで、心がジメジメ、陰気になっているときに。胸に温かさと軽やかさを広げてくれます。

また、葉のエッセンシャルオイルには強力な殺菌・抗菌作用があるのも特徴。さらにブラック・スプルースは、皮膚の痒み、炎症を抑える作用が優れているところから、天然のステロイド剤と呼ばれることも。(この呼び方が適切とは思いませんが)

そのため、アロマセラピーではアトピー性皮膚炎などの炎症を鎮めるために用いられます。ちなみに東洋医学では、肺と皮膚(呼吸)は繋がっていると考えます。五行では、金の質。

素晴らしい薬理作用から、近年アロマセラピー界で人気上昇のブラック・スプルースですが、実は温暖化により永久凍土が融け出して地盤がゆるみ、幹を支えておくことができずに倒れてしまう樹木が増えています。また、数年前から落雷による山火事が増えて、アラスカの森林が大きな被害を受けています。

そういう背景があってか、私が愛用しているスイスのファファラでは2年前からブラック・スプルースのエッセンシャルオイルを生産終了しています。残念な厳しい現実。

無残に倒れてしまっている樹木や山火事の様子を見ると、植物を使うだけでなく、植物のために何かしなくては、という意識が立ち上がります。

植物も、地球も生きている。エッセンシャルオイルを使うときは、地球環境にも意識を向けて大切に使いたいですね。むやみに消費して自分たちだけが良くなればそれでいい、では、全体のバランスが取れない気がします。

地球のすべてが調和のもとに生きられますように。

ブラック・スプルース/Black Spruce

Picea mariana

マツ科トウヒ属

常緑針葉樹

香りの抽出部位  針葉 枝

小林ケイ 公式サイト

https://www.kobayashikei.info/

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